1月9日、(社)燕三条青年会議所
寺子屋調整委員会の主催する、委員会セミナー『子ども達を取り巻く環境を知り、考える』が三条市の三観荘で開催された。
多くの子ども達を見つめて来られた方々に、子ども達を取り巻く環境と問題を解決するための率直な疑問を投げかけながら、パネルディスカッションが行なわれた。
パネリストは長岡市立青葉台中学校 校長、新潟県技術家庭科研究会 副会長の目黒進(めぐろすすむ)氏、環境NPO良環
代表、NPO新潟災害ボランティアネットワーク 理事長の川瀬和敏(かわせかずとし)氏、NPO三条おやこ劇場
前代表、(医)川瀬神経内科クリニック 事務長の川瀬弓子(かわせゆみこ)氏、コーディネーターは(社)燕三条青年会議所
寺子屋調整委員会 委員長 鶴巻吉英(つるまきよしえい)君だ。
子どもだった頃と現在の子ども達の生活環境の変化は?
「昔は家族親戚が多くて色々な人間と関わりがあり、大勢の人達と遊べたので様々な体験ができた。やって良い事、悪い事も上級生が教えてくれた。そんな体験が殆どなくなってきたから、躾と足らない部分は学校側に何とかしてくれと言うしかなくなったんだと思います。現在は家族が少人数化してきて親がほっといて欲しい事まで口を出してくる。大人の価値観や考え方で物事が動くし、決まってくる。子どもには子どもの世界、考え方、時間があると思う。」(目黒進氏)
「小学生の頃なら上級生、下級生も一緒になって五十嵐川に入って遊んでいた。その中で色々なル−ルを教わったが、今の子どもは集団でのルールが作れない。今は子ども達が集まってもお互い無言でゲームをしていて会話をしていない。親子の会話も少なくなっている。野外に出ると親子で話しをしなければならない場面が多々出てくる。その中で親子の会話をつなげていく、地域の会話をつなげていくことが様々な面で大事だと思います。親子の触れ合いというのは自然の体験の中で育っていくものと思う。私達の活動はそのような事をサポートする、支援する、支えるという気持ちでやらせてもらっています。」(川瀬和敏氏)
「青年達と就労支援で関わることがある訳ですけれども、今の子達は一歩が非常に慎重且つ自分で決めちゃう。小さい輪の中で自分で結論を出してしまう訳ですよ。それをどうやって心に届く働きかけをしていったらいいのかな〜って本当に常々思っているんですが、やっぱり体験の積み重ね。私は親が転勤族で子どもの頃グループや仲間には入れてもらえなかったけど、外で遊んでいる男の子達の遊びをずっと見ていました。見ることはやることと同じくらい大事だと思う。私みたいにやらなくてもいいから、見ているだけでもいいんですよ。
おやこ劇場でお母さん達とお付き合いをさせてもらっていますが、お二人の先生が仰った環境を自分達の仲間で作ろうと努力しています。0歳、1歳、2歳の子達はよくけんかをしますがずっと見守っているんですよ。見守ることができる環境を自分達で作っているんですね。」(川瀬弓子氏)
目黒先生は子ども達に体験させることに関して学校の枠にとらわれないで活動していますが、子供達を見ていて気付いたことやエピソードを教えてください。
「実体験をすることが少なくなったんですね。テレビやビデオを見て、本を読んでその気にはなってますが、実際には体験したことがない。体験をすることが少なくなっているわりにお金を出して時間と経験を買える。お金さえあれば色々なことができる。そんな中で子ども達は生活体験がすごく不足しているのと、大人がものすごく口出ししすぎるのと、家族構成も変化したから子ども達は大変だと思うんです。自己決定をさせないで親が誘導して育てているので自信がなくなっている子ども達が増えているんですね。自信がないので人と関われない。自分が自分で良いんだってなかなか思えないから、中学校で問題になっている不登校やいじめ関係の子は人と口の利き方が分からない。
今の中学生を見て感じているのは、知恵っていうんですか?「針に糸通すときは、ちっと唾つけて捩るといいんだぞ」そういうレベルの話です。そういう知恵が離れちゃっているんですね。子どもは生活経験がないですから知っている知識をどうやって使うか分からない。何かあると友達関係も全部チャラにしてもう一回やれたら良いんだけど、そうじゃないのに気付いていない。
▲目黒進氏 |
人が成長するのに欠かせないのは時間だとか課題だとか部活動でも何でも良いんだけれど、何かを一緒に共有すること。もう一つは教室で授業を一緒に受けているんではないくて、一緒に汗を流して皆で一緒にやったっていう意識。ういうのが必要なんじゃないかって思っています。
だから「やってなんぼ、できてなんぼ」の世界がある訳ですから、理屈だけ分かっていても、どんなに面倒な専門書を読んで作り方が書いてあってもできなきゃ何にもならない訳ですよ。今それを私は少しずつ中学校に入れていけないかと思っています。」(目黒進氏)
川瀬和敏先生は小学校を回られたり活動をしていますが、その中で感じるところは?
「埼玉県の稲穂学園という私立の幼稚園なんですけれども、林の中に幼稚園が立っているんですが、自然の中で自由に遊ばせている。伸び伸びと小さい子ども達が活発に動き回ってました。その中で自然との付き合い方、遊びの仕方、子供同士の付き合い方、自分の親ではない世代の方との付き合い方も学んでいくんじゃないかなって考えていました。
五十嵐川で幼稚園の子ども達を対象に川遊びをやったことがあるんですよ。今は親や学校のほうから近づくなって言う訳ですから子どもが活き活きしていました。小さい魚が取れましたからそのお話しをしたり、多分親も知らない知識だったんでしょう、お話しが子どもにとっては新鮮だったんですね。聞いてみてビックリしたのは子ども達は五十嵐川に魚がいるってことを知らないんですよね。
▲川瀬和敏氏 |
そんな支援をしてくれる団体、地域を育てていかなきゃなのか。体験させるだけじゃなくて、それを実行に移すためのシステムをどのような形で作っていくのか。それは地域の団体であったり、地域ぐるみでやるしかない。地域コミュニティーの形成に繋がっていきますけれども、専門知識なんかは色々なネットワークが必要になると考えています。色々な形で自然の中で学んでこそ得るものがあるっていうのと、その中から人間関係も学べると考えています。」(川瀬和敏氏)
川瀬弓子先生は様々な場面で子どもと関わる機会があると思うんですが、エピソードをお聞かせください。
「劇場の大きな活動の一つに子どもの居場所というのを主やっています。2箇所持っていまして毎週木曜日は丸井今井邸、第4日曜日は大崎児童館なんですね。
丸井今井邸で放課後子どもが集まるだろうと想定したんですけれども1年間待ったけれども2、3回しか子どもは来なかった。その背景は目黒先生が仰った通りなんです。でも開けておくことが居場所だと考え待ってみたら、午前中に0歳から3歳未満の子どもを連れた親御ざんが居場所がなくて、集まってきたんです。そのママ達は家の中で小さい子どもと一緒になって煮詰まっちゃうんですよね。近所には友達もいない、外へ行っても居場所がないということがあって来るようになったんです。そこで未満児と母親達にも居場所が必要だって気付かされました。
▲川瀬弓子氏 |
大崎児童館なんですけれども、待つこと1〜2年。去年の暮れにお爺ちゃんとお婆ちゃんに連れられた子どもが2組、パパとママに連れられた子どもが2人、ビーズ教室に来た子どもが1人。やっぱり待つってことが大事なんだと気付きました。それと同時に子ども1人に大人が2人付く、そんな環境の中で地域通貨「ラテ」を子ども達のゴッコ遊びの中に入れたかったんですよ。自分が使わなくなったおもちゃを持ってきたらラテ券を1枚渡しますというシステムを作りました。色々なところでラテ券をもらえるシステムを水面下で作っておきまして、今度は欲しいおもちゃをラテ券と交換するシステムを作ったんですけれども。そこで嬉しい発見をしたのは、子どもには子どもの価値観があるって気が付いて感動しました。大人がいかに待つかとか、子どもの価値観を最大限尊重してやらないといけないなと子どもから教えてもらったんです。」(川瀬弓子氏)
多くの子ども達を見つめて来られた方々を講師としてお招きし、家庭や学校等の子ども達を取り巻く環境を認識することができました。
取材者/寺子屋広報渉外委員会 副委員長 石黒 良行 |
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